【実験あり】硬化剤を入れない、もしくは入れすぎるとどうなる?塗装の失敗を防ぐために重要な理由

塗料の硬化剤は割合の計算が面倒…正しく入れないとダメ?
「いちいち硬化剤を量って混ぜるのが面倒だから」と硬化剤を入れなかったり、逆に入れすぎたりしたことはありませんか?
主剤と硬化剤を混ぜ合わせてから使う塗料のことを「2液型」といいます。主剤と硬化剤が化学反応を起こして強固な塗膜を形成するため、フタを開けてすぐ塗れる1液型の塗料よりも耐久性に優れた仕上がりになるのがメリットです。
一方のデメリットとしては、塗る直前に行う配合のひと手間が煩わしく、使い勝手が悪いとも言われます。ですが、硬化剤は入れ忘れても、入れすぎても塗料本来の性能が発揮できなくなってしまいます。
しかし、硬化剤の割合を守る重要性を、実体験として理解している方は案外少ないのではないでしょうか。
硬化剤を入れなかったり、入れすぎたりすると、仕上がりにどう影響するのか具体的にご存じでしょうか?
硬化剤の比率を変えると仕上がりがどう変わるのか?
これを確かめるべく、ある実験を行いました。
実験で使用した塗料は、当店で調色・販売している「2液ウレタン塗料」です。
主剤と硬化剤を正しい比率で混ぜ合わせて塗装すると、耐候性、耐摩耗性、耐薬品性、耐水性、耐油性、耐酸性、耐アルカリ性など、様々な耐性に優れた仕上がりになります。
今回は、硬化剤の配合比率を変えた2液ウレタン塗料を塗装してしっかりと乾かし、5種類の塗り板を作成しました。
- 塗り板① カタログどおりの適正配合(主剤4:硬化剤1)
- 塗り板② 硬化剤なし(主剤10:硬化剤0)
- 塗り板③ 硬化剤少なめ(主剤8:硬化剤1)
- 塗り板④ 硬化剤多め(主剤2:硬化剤1)
- 塗り板⑤ 硬化剤かなり多め(主剤1:硬化剤1)
そして、溶解力の強いラッカーシンナーにこれらの板の先を20分間浸す実験を行いました。

はたして、硬化剤の配合比率が異なると、耐久性にどれくらい違いがでるのでしょうか。
① カタログどおりの適正配合の結果

① カタログどおりの適正配合(主剤4:硬化剤1)は当然問題ありませんでした。ご覧のとおり塗膜の剥がれはありません。シンナーに浸していた部分とそうでない部分は見分けが付きません。
② 硬化剤なしの結果

② 硬化剤なし(主剤10:硬化剤0)は、塗膜が溶けて綺麗に剥がれてしまいました。
「硬化剤を入れなくても固まりますか?」とご質問いただくことがありますが、当店の2液ウレタンは硬化剤を混ぜなくとも一応乾いて固まります。
しかし、これは塗膜の中に入っている溶剤が蒸発しているだけで、2液型塗料として化学反応を起こして固まっている状態ではありません。
そのため、画像のように本来の塗料の設計上の性能を発揮できません。
③ 硬化剤少なめの結果

硬化剤なしの時と比べるとマシですが、③ 硬化剤少なめ(主剤8:硬化剤1)も、シンナーに浸した部分の塗膜がポロポロと剥がれてきてしまいました。
硬化剤の量が少ないと、主剤の一部が化学反応を起こさないまま固まることが原因です。
ちなみに、主剤に適量の硬化剤を入れた後、しっかり混ぜ合わせなかった場合、硬化ムラと言って似たような状態になる恐れがあります。
④ 硬化剤多めの結果

これは予想外だったのですが、④硬化剤多め(主剤2:硬化剤1)は特に問題ありませんでした。配合比率のミスとしても許容範囲内なのだと考えられます。
⑤ 硬化剤かなり多めの結果

硬化剤なしや少なめと比較するとマシですが、⑤ 硬化剤かなり多め(主剤1:硬化剤1)も一部が剥がれてしまいました。2:1は大丈夫でしたが、1:1は許容範囲外の配合ミスになるようです。
主剤と化学反応せずに塗膜内に余ってしまった硬化剤分が溶けてしまった状態だと考えられます。
ちなみに、ポリパテやFRPの樹脂などとは異なり、硬化剤を多く入れたとしても塗料の硬化が早まることは基本的にありません。むしろ、画像のような塗膜不良の原因となりますので、カタログどおりの配合比率を守ることが大切です。
まとめ:硬化剤の配合比率を変えると塗装の失敗に繋がる恐れあり
実験のとおり、硬化剤の配合比率を変えて塗った場合、本来の性能(耐久性)が損なわれる恐れがあります。ちなみに、「艶が出にくい」といった美観面で弊害が出る恐れもあります。塗装の失敗やクレームを防ぐためにも、硬化剤の配合比率を守って塗装してくださいね。
そもそも、2液型塗料の主剤と硬化剤のリットル当たり単価を比較すると、必ず硬化剤の方が高くなるため、硬化剤を入れないのも入れすぎるのも非常にもったいないです!
当店の「2液ウレタン塗料」を使用される際は、硬化剤のご注文もお忘れなく!
塗料の容量に対して、必要な量だけ小分けサイズでお買い求めいただけますよ。
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