日本ペイント(ニッペ)の遮熱塗料「サーモアイ」の遮熱性能はどれくらい良い?

秋が近づき、朝晩は少しずつ涼しくなってきましたね。ただ、今年は記録的な猛暑だったので、昨年よりエアコンの効きが悪いと感じたり、電気代の高さに驚いた方も多いのではないでしょうか。そんなお悩みを解決する手段として注目されているのが、塗るだけで建物の温度上昇を抑えられる「遮熱塗料」です。

今回は、遮熱塗料の中でも有名な日本ペイントの「サーモアイ」シリーズについて取り上げます。他の遮熱塗料と比べて何が優れているのか、そして実際にどれほどの効果があるのか。様々なメーカーの塗料を取り扱う塗料販売店が検証してみました。

遮熱塗料「サーモアイ」とは

そもそも遮熱塗料とは、特殊な顔料を配合することで太陽光の熱エネルギーを効率的に反射して、建物内部の室温上昇を防げる機能性の高い塗料です。高日射反射率塗料とも呼ばれます。

その中でも特に有名な商品が「サーモアイ」。東京の大手塗料メーカーである日本ペイント株式会社(通称ニッペ)が製造・販売している商品で、2009年の発売以来、2024年までに累計約8,500万平方メートルもの塗装実績を誇ります。

「サーモアイ」シリーズのメインは屋根用ですが、外壁用「サーモアイウォールシリーズ」や路面用「サーモアイロードW」といった関連商品もラインナップされています。今回の記事では、屋根用「サーモアイ」シリーズについて詳しく見ていきます。

屋根用「サーモアイ」シリーズの詳細

日本ペイントの「サーモアイ」シリーズは、樹脂タイプの異なる4つの商品をラインナップしており、塗装する屋根の状態や希望の仕上がり、予算など、様々な条件に応じて最適な塗料を選べます。

▼屋根用「サーモアイ」シリーズのラインナップ一覧(2025年9月現在)

商品名樹脂タイプ特長
サーモアイDF2液フッ素長期にわたって高い耐久性を保持
サーモアイSi2液シリコン過酷な環境下でも耐久性を保持
サーモアイUV2液耐UV特殊ウレタンUV耐久性を向上、コストパフォーマンスが高い
サーモアイヤネガード1液特殊アクリル圧膜を形成し、長期にわたって消耗に耐え、屋根を腐食から保護

注意事項としては、「サーモアイ」シリーズはいずれも油性塗料であることです。施工時にはシンナー特有のにおいがするため、特に住宅街での施工の際は、近隣への配慮が必要です。ただ、水性塗料に比べて耐久性に優れ、油性塗料の中でも弱溶剤型という比較的扱いやすい部類です。

主にスレート・なみがたスレート屋根、金属屋根・トタン、住宅用化粧スレート屋根等への塗装できます。

サーモアイの特長

「サーモアイ」の大きな特長は、上塗りと下塗りの「ダブル反射」による高い遮熱効果です。

「サーモアイ」の上塗り塗料には、太陽光の赤外線を透過させる特殊な技術(赤外線透過テクノロジー)が採用されています。「通してしまって大丈夫?」と心配になるかもしれませんが、これは反射しきれなかった赤外線(熱エネルギー)をなるべく吸収しないための技術です。

※日本ペイント「サーモアイ」カタログから抜粋

そして、専用の下塗り塗料(サーモアイシーラーおよびサーモアイプライマー)にも遮熱機能が備わっているため、上塗り層を通過してしまった赤外線は、下塗り層で反射する仕組みになっています。

さらに、低汚染性、防藻・防かび性を兼ね備えている点も特長です。遮熱塗料の効果低下の原因のひとつに「塗装表面の汚れ」がありますが、これらの機能によって、長い期間塗膜をきれいに保てるため、高い遮熱効果を維持できます。

また、JIS(日本産業規格)、SuMPO EPD(エコリーフ)、環境技術実証事業(ETV)といった第三者機関からの認証を積極的に取得している点も魅力的です。

サーモアイの遮熱効果は?

公式サイトによると、トタン・鋼板屋根に塗装した場合、屋根表面の温度は最大約23℃低下し、室内温度は最大約2.5℃低下するようです。
また、カタログによると住宅用化粧スレート屋根に塗装した場合、電気代は最大約27%の削減になるんだとか。

ただし、塗装した屋根材の種類や状態、実験の仕方によって結果は異なります。また実際のところ、屋根の表面だけでなく、屋根裏側の温度はどれくらい下がるのかという点が気になりました。そこで、「サーモアイ」塗装面の裏側の温度を計測する実験を行ってみました。

実験内容

  • 約108cm×127cmを市販カラー鋼板を2枚用意
  • そのうちの1枚にサーモアイSiを塗装
  • 室温を23.5℃に保ち、100V90Wの発熱ランプでそれぞれの板に熱を加える
  • 10分後の板裏側の温度を計測

実験に使ったカラー鋼板はこちら。温度計を固定する位置がずれないように、裏面には目印をつけています。

実験の様子です。ランプで加熱している板の裏側の温度を計測しています。

10分間熱した後、板裏側の温度の違いはこのようになりました。

(1)
無塗装の
カラー鋼板の裏面温度
(2)
サーモアイSiを塗装した
カラー鋼板の裏面温度
(1)と(2)
の温度差
91.3℃75.6℃15.7℃

「サーモアイSi」を塗装しただけで、板裏側の温度はなんと15.7℃も低くなりました。塗装表面だけでなく、裏側への熱の伝導もしっかり抑制してくれる効果の高い遮熱塗料であることが分かりました。

サーモアイとその他遮熱塗料との比較実験

関西ペイント「アレスクール」と比較

次に、同じく有名な遮熱塗料である関西ペイントの「アレスクール」(詳細はこちら>>)との性能比較実験を行いました。10分間ランプで熱した後、板裏側の温度の違いはこのようになりました。

(1)
サーモアイSiを塗装した
カラー鋼板の裏面温度
(2)
アレスクールを塗装した
カラー鋼板の裏面温度
(1)と(2)
の温度差
75.6℃80.9℃5.3℃

なんと、「サーモアイSi」を塗装した板裏側は、「アレスクール」を塗装した板裏側よりも約5℃温度が低くなりました。採用している顔料の違いによる性能差かもしれません。

遮熱力最強の「リフレクトサーモ」と比較

さらに、当店で取り扱っている中で最も温度抑制効果の高い「リフレクトサーモ」という商品とも比較してみました。こちらは実験の様子を動画でもご紹介しています。

全実験の結果は以下のとおりです。

無塗装鋼板サーモアイアレスクールリフレクトサーモ
26.5℃28.1℃27.3℃27.9℃
58.9℃45.9℃51.6℃38.6℃
74.5℃58℃63.9℃47.2℃
87.4℃65℃71℃52.5℃
85.5℃68.5℃75.2℃55℃
87.7℃70.9℃77.5℃57.3℃
88.5℃73.5℃78.8℃59.9℃
89.4℃74.4℃79.3℃60.4℃
90℃74.8℃79.4℃61.2℃
90.4℃75.3℃79.9℃61.7℃
91.3℃75.6℃80.9℃62℃

実験の結果、「リフレクトサーモ」を塗装した板裏側は、「サーモアイSi」を塗装した板裏側よりも約13℃温度が低いという結果なりました。
これは、遮熱と断熱の両方を併せ持つ「リフレクトサーモ」の優れた性能によるものと考えられます。そのため、より高い遮熱性能を求める場合は、「リフレクトサーモ」がおすすめです。
ただし、「リフレクトサーモ」は凹凸のあるつや消し仕上げのため、汚れが目立ちやすいという欠点があります。一方、「サーモアイ」は長期間汚れがつきにくいという点で優れています。

日本ペイントの「サーモアイ」シリーズについて、もっと詳しく知りたい、購入を検討しているという方は、当店のお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡くださいませ。塗料の知識豊富なスタッフが丁寧にご案内いたします。

遮熱断熱塗料「リフレクトサーモ」に関しては、当店のサイトページでお取り扱いがありますので、気になった方はぜひチェックしてみてください。

リフレクトサーモの詳細はこちら>>


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